本当は他の友達と一緒にいたかったのかもしれない。

それでもわたしと一緒にいてくれた優しい人。

だから文句なんて言えない。

わたしは今からひとりになる。

本来いるべきだった位置に行くんだ。


「うん、今までありがとう」


無理やり笑顔をつくり、感謝の言葉を口にする。

ミライちゃんの本音を聞けてよかった。

本当の本当はやっぱりつらいけど。悲しいけど。
仕方がないよね。

自業自得だ。


「……………最後までそれかよ」


背を向けた時にミライちゃんがボソッと何か言ったけど、もう聞きとる勇気はなかった。

急に涙があふれそうになったのを下唇を噛みしめて堪える。

その時、ふと周りの視線に気がついた。

わたしに向けられるたくさんの冷めた視線。

ボソボソと口が動いているけど、何を言っているのかまではわからない。

ただ、わたしのことを言っているんだろうってことはわかる。

ミライちゃんしか見えていなくて、周りから注目を浴びているなんてそこまで気にしている余裕はなかった。

考えてみればわかることだ。

教室で仲が良かったはずの二人が、夏休み明けの二学期初日。
登校してすぐの朝の時間に、大きな声で言い合いをして決別しているのだから。

目立たないわけがない。
内容も内容だ。

男女問わず人気者の大野くんの名前が出ている。

彼の名前が出ると女子の間で緊張が走る。

それはいつものことだった。


“みんなの大野くん”


これは暗黙のルールだということを思い出す。