これ以上傷つきたくないから。
少しでも傷口を広げたくなかったから。
正面から向き合えば傷つくことはわかっていたから。

それでも、正面から向き合うことでしか、わかりあえることなんてできるわけがなかったのに。


「もういい。莉緒といるの正直疲れてたしちょうど良かったんだよ。いつも受け身で自分ひとりじゃ動けないし、負担だったよ」


吐き捨てるように、感情のこもっていない声だった。

わたしに絶望して諦めたような声。

心の底にあった本心が突然あふれたみたいな言葉だった。

きっとミライちゃんは、わたしにそんな不満をずっと抱いていたんだ。

抱えたまま、今まで一緒にいてくれたんだ。

今わたし、ミライちゃんと同じこと思った。

友達なら何でも言ってよ、って。

そういうことなんだ。
どんなことでも言うべきだったんだ。

これからも仲良くしたいからこそ、わたしたちはどんなことでも言うべきだった。

勝手に憶病になって逃げだして、最善だと思い込んで考えることを放棄した。


「ほら、早く自分の席に行きなよ。もうそれくらいの覚悟はできてるんでしょ」


覚悟とは多分、ひとりになる覚悟。

わたしはミライちゃんの言う通りすべて受け身で、自分からは行動しないタイプの人間だ。

歳を重ねるごとにどんどん周りの声や視線が気になって、怖くなって、顔色をうかがうようになってしまった。

だから、ミライちゃんだけが唯一、わたしの友達と言える存在だった。

そんなミライちゃんとこんな関係になってしまえば、わたしの行き着く先は孤独だ。

ミライちゃんはフレンドリーで優しくて明るい性格だから、友達は多いけどわたしがひとりになるからって気を遣ってか一緒にいてくれていた。

と、今ならわかる。