「ほんとは大野くんの気持ち、ずっとわかってたんじゃないの? うちの話聞いて、心の中で笑ってたんでしょ?」
知らなかったよ。
大野くんの気持ちはあの時に初めて知ったんだもん。
でも、それをどう伝えたらいい?
どう伝えても、ミライちゃんは聞く耳をもってくれないんじゃないの?
「何で、何も言い返さないわけ?」
……そんなこと言われても、もう何も言う言葉が見つからないんだよ。
何を言っても言い訳みたいで、ミライちゃんを怒らせてしまいそうで。
それなら何も言わないほうがいい。
黙って、ミライちゃんが落ち着いて話し合える余裕ができるのを待ったほうがいい。
「……また、何も言ってくれないんだね。言い訳でも何でも、もっと必死になってしてくれたほうがまだ良かった」
自嘲するように笑ってから視線を落とす。
わたしはまた、選択を間違えてしまったらしい。
何も言わないほうがいいと思った。
それがいちばん良い方法だと思った。
……本当に?
わたしは本当にそう思ったんだろうか。
今後のことを考えて、選択できたんだろうか。
ミライちゃんと一緒に過ごした時間や性格を振り返って、これからも一緒にいるためにはどうすればいいか、本当に考えていたかな。
きっと、いや、絶対にできていない。
わたしは逃げた。諦めた。
今のミライちゃんには何を言っても無駄だって。話なんて聞いてもらえないから伝わらないって。
言って拒絶されるのが怖いから、変にこじらせるよりも何も言わないほうがいいんだって思い込んだ。
逃げ道をつくって、それが最善のように決めつけた。
自分のことしか考えていなかった。