「えっと、あの……」


何か言わないと。

そう思っても真っ白になった頭では、この場にあった言葉なんか思い浮かばない。

何か……。


「あ、落ちる」


迷っている間に溶けて棒を滑り始めたアイス。

落ちる前に大野くんがわたしの手首を掴んで、自分の口にアイスを運ぶ。

そのままパクリと一口で、わたしの食べかけのアイスをぜんぶ食べてしまった。

わたしの手の中に寂しく残った木の棒を見つめる。

躊躇することなく食べかけを食べてしまった。

食べられたこと自体は別にいいんだけど、今どきの男子高校生って彼女でもない異性の食べかけを食べることに抵抗はないんだね。

すごいな。
わたしは特別仲が良い異性はいないから知らなかった。


「時田」


不意に名前を呼ばれたから視線を大野くんへと戻す。


―――瞬間、視界いっぱいに大野くんがいた。


再び頭が真っ白になり完全にフリーズする。
思わず思考放棄。


「俺、時田のことが好きだ」


急な展開に追いつかない。

たぶん数秒で大野くんの顔全体が見えるようになって、それから耳に届いたセリフ。

この暑さのせいでおかしくなったんじゃない?

それかわたしをからかって反応を楽しんでいるんだ。

あ、よくある罰ゲーム告白かもしれない。

きっとサッカー部の人からテキトウに誰かに告白して来いって言われたんだよね。

今なら怒らないよ。
笑って流してあげるよ。

だから……。