始まりは太陽がジリジリとこの世界を焼き尽くすのではないかというくらい主張している八月。
たしか二日だった。

夏休みに入って一週間と少ししか経っていないのに、部活動に所属していないわたしはすでに昼夜逆転のダラダラした怠惰な生活になりつつあった。

そんなわたしを少しでも動かそうと、お母さんがおつかいを頼んだ。

灼熱の太陽の下、重たい体に鞭打って飛び込んだ。

わたしの通う高校の近くのドラッグストアに行き、渡されたメモを見ながらティッシュにシャンプー、食パンにお茶っ葉と気分で食べたくなったアイスをカゴに入れる。

買い忘れはないかをメモと照らし合わせて確認してからドラッグストアを出た。

さっきよりもジリジリと強さを増している太陽。

暑すぎて我慢できず、外に出てすぐにさっき買ったソーダ味のアイスバーをビニール袋から取り出す。

帰り道にある滑り台と砂場とベンチしかない小さな公園を横目で見ると、ちょうどベンチには木と隣のアパートがつくる陰が落ちていた。

そこで休憩しようと、公園に入りベンチに腰掛けてアイスバーの袋から出して食べ始める。

口いっぱいに爽やかな甘さのソーダ味がひんやりと広がり、体の熱を冷ましてくれる。

雲ひとつない空はソーダ味のアイスバーと同じ色。


「良いもん食べてんね」


不意に声をかけられて、思わず貴重なアイスを落としそうになった。

視線を空から前に向けると大野くんが制服姿で立っている。

きっと部活終わりだ。

夏休みでも部活動はもちろんある。

サッカー部なんてほぼ毎日あるんだろう。


「隣いい?」
という大野くんの質問にこくりと頷く。

彼はわたしの隣に腰を下ろして、サッカー部指定のスポーツバッグからポカリスウェットを取り出して半分くらい入っていたのをいっきに飲み干した。

その飲みっぷりに男の子だな、なんていう簡単な感想をもつ。