「ガキは黙って財布しまえ」
「ユイくんもまだ学生じゃん」
「黙ってって言ったのに」


横目で軽く睨まれてしまったから、カバンの中で掴んでいた財布からそっと手を離した。

ここは黙って奢られることにする。

ユイくんが支払いをして商品を受け取るとそれをそのまま渡してきた。

両手で受け取って膝の上にそっと置き、ジュースがこぼれないよう抱えるようにして持ち安定させる。

車が動き出し、ドライブスルーを抜けて道路に出ると信号が赤ですぐに止まった。

久しぶりなのにユイくんの隣は心がすごく落ち着く気がする。


「着くまで莉緒の話聞かせてよ」
「え、なんで?ユイくんが話してよ。久しぶりだからユイくんの話が聞きたい」
「俺、運転中は集中したいからあんまり話さないんだよ。でも聞くことはできるから」
「そうなんだね」


ちょっと意外。
ユイくんなら普通に会話しながら運転できそうだけど。

でも、理解した。
だからさっきも短い返事だけだったんだ。

たしかにユイくんが自分から話したのは、わたしの前に現れた時と信号が赤になって止まった時とドライブスルーの注文の時だった。


「うーん、けど特に話すことないよ」
「じゃあ、体操服を着てる理由を教えてよ。赤色目立つな。俺は紺だったし」
「……爆発するかも」
「赤だから爆発すんのか?それはダイナマイトに着火する火なんだ?」
「何言ってるの?」


意味のわからないことを言うユイくんに思わずツッコミを入れたわたしを、ははっと笑って受け流す。

そんなユイくんになら、話してもいいかなって思った。