「変な感じ。ユイくんが運転してるなんて」
「そうか」
と、短く相槌を打ち、どこから出したのか突然タオルを頭にかけられた。
驚きながらもお礼を伝えてタオルの隙間からユイくんを見るけど、真っ直ぐと前を向いている。
運転しているのだから当然だ。
そうでないと困る。
ユイくんは何でもそつなくこなすタイプだから大丈夫だろうけど、初めて乗る人の運転はどうしても身構えてしまうのも仕方がないこと。
だけどそれはすぐに杞憂だと思った。
とても安心感のある乗り心地。
お父さんの運転とは違い揺れもあまりなく、信号が赤になって止まる時のブレーキも優しく安定している。
わたしの前に現われた時の耳障りなブレーキ音は聞き間違いだったのだろうか。
とにかく、さすがはユイくんだ、と感じた。
全然会っていなかったのにあまり緊張しないのは、ユイくんが変わっていないからだと思う。
「長いドライブになるから、腹減るし何か買っとこ。めんどくさいからドライブスルーできるとこで。近いのはマックか牛丼だな」
「マックがいい」
「了解」
信号が青になり再び車が走り出す。
わたしは黙って頭にかけられたタオルで髪を拭きはじめる。
湿り気は残るけどこれで十分だ。
タオルはそのまま首にかけた。
「莉緒はハッピーセットでいい?」
「いつの話⁉ 期間限定のがいい。チーズ入ってるやつね。飲み物はオレンジジュース」
「そこは変わってないんだな」
ユイくんがくすっと色っぽく笑う。
そんなユイくんに唇を尖らせるけど、そんなわたしのことは気にせずにマイクに向かって注文をしてくれた。
ユイくんの声、やっぱり落ち着くな。
と思いながら、カバンの中から財布を取り出そうとするとその手を止められた。