「それなら嬉しい」


素直に言ったユイくんは照れたように前を向いた。

横顔はやっぱり綺麗でかっこよくて、でも少し照れた色があり頬が緩んだ。


わたしも前を向く。

どんどん空が明るくなる。


ふと電車の音が遠くで聞こえた。

始発が動き出したみたいだ。


一日が始まる。みんなの一日が。



世界が動き出す。



奥のほうでは雲が海のように迫ってきていた。

それは流れてきて山を覆っていく。


雲の上に浮かぶ太陽は幻想的で、まるで希望が現れたようだった。


分厚い雲の上に、光は必ずある。


これがユイくんが見たかった景色。

とても素敵な景色。


ユイくんと見ることができてよかった。

不思議と感動で胸がいっぱいになってくる。

こんな景色が見られるなんて知らなかった。



「この世界は時に汚くて荒んでいて残酷で、どうしようもないけどさ」


ぽつりと言葉を紡ぎだすユイくんの声は、日の出のように爽やかで透き通ったように綺麗で耳にすっと入ってくる。

わたしはこの世界のことをまだまだ知らないみたいだ。

ゆっくりと雲が晴れていき、太陽が街を照らしだす。