「隣にいて無邪気に笑ってくれた。俺にはそれだけで十分だった」
「え? たったそれだけ?」
戸田さんと同じことを言うユイくんに、本当に二人の気持ちは似ているのかもしれないと思った。
「何気ない言葉や莉緒の笑顔だよ。たったそれだけって言うけど、たったそれだけが俺を救ってくれた。唯一救われた」
驚いて瞬きを繰り返す。
わたしは本当に何もしていないのに。
隣で話をして聞いて、わたしがユイくんと一緒にいたかっただけだったのに。
「人が救われる時っていうのは、大きなドラマや劇的展開があるとは限らない。たった一言、仕草、行動でも、誰かを救ってしまうことがあるんだよ」
何気ないことでも……何が相手に影響するのかわからない。
「人が救われるきっかけなんて、何気ないことだったりするんだよ」
わたしはユイくんを救っていたんだ。
いつももらってばかりだと思っていたけど、意識的ではなくてもユイくんを救うことができたというのはすごく嬉しいことだ。
「莉緒が救われたっていうのだって、ただのドライブでだ」
「でも、それは相手がユイくんだからだよ」
ユイくんとだからきっと救われたんだ。
そう自信をもって言える。
ユイくんがいるだけで、わたしの世界はカラフルになりとても楽しいものへと変わっていく。