「莉緒の無邪気な笑顔を一番近くで見れて、俺に向けてくれて、それだけで心が救われた。悩んでいるのもばからしくなった」
だんだんと明るくなってきた空のおかげで、ユイくんの表情が見えてくる。
すごくすごく、優しい顔で目の前に広がる光景を見ていた。
「俺はあの時、莉緒に救われたんだよ」
ゆっくりとわたしのほうを見たユイくんと目が合う。
こんなに近くで視線が絡み合うのは初めてかもしれない。
肩が触れるくらい近い距離にいるユイくん。
わたしが目を逸らすことができない。
「莉緒が俺を救ってくれた。だから今度は俺が、莉緒が苦しい時、悩んでいる時に助けるって決めていた。救ってやるって思ってた。その時から莉緒は俺の特別で大切な女の子だよ」
初めて知るユイくんの気持ち。
胸がじんわりと温かくなり、その温かさが全身を包む。
「ドライブは、どうだった? 俺は莉緒を少しでも救うことができたかな?」
不安が混じった声と表情。
心からわたしに幸せを願ってくれているのだと伝わってくる。
だから笑顔で頷いた。
「すっごく楽しいよ。ユイくんに救われて今ここにいるんだよ」
ユイくんがあの時いなかったら。
ドライブを始めなかったら。
わたしはわたしではいられなかった。
本当に感謝している。
ユイくんには感謝してもしきれないくらい。
「ドライブしてくれてよかった。これからも、ユイくんとドライブしていたい。いろいろなところに行きたい」
わたしを救うためのドライブだったのかもしれない。
いや、きっとわたしを救うことが目的のドライブだったに違いない。
だけどこれからはそうじゃなくて、ユイくんと一緒にいたいからドライブをしたい。
ユイくんの隣でたくさんの話をしたり聞いたりして、共有していきたい。
「行こう。どこへでも、莉緒が行きたいところへ。俺はずっと莉緒の味方だから」
ユイくんはやっぱりわたしに甘い。
優しすぎるんだよ。
「でも、やっぱりわからない。どうしてそこまで?」
「今話したじゃん」
「話してくれたけど、そんなにすごいことしてないよ」
ユイくんが覚えてくれていて話してくれたことわたしはちゃんと覚えていない。
戸田さんの時と同じだ。
「そこまでしてもらえる理由はないよ」
「理由とかこざかしい。そんなのいるか?」
呆れたように息を吐くユイくんに首を傾げる。
いらない、のかな?
でも、わたしはユイくんを救おうと何かしたわけでもない。
ここまでしてもらえるようなことじゃ……。