隙あらばユイくんにひっついて遊んでもらおうと思っていた。
お兄ちゃんがいたらユイくんの話をじっくり聞けないから。
「〝隣にいていい?〟なんてガキのくせに気を遣ってさ。そのくせ、高校生の兄の部屋には遠慮なく入ってくんの」
思い出し笑いかユイくんが声を出して笑った。
その笑い声はこの真っ暗な空間を温かく包み込む。
「いいよって言えば俺の隣に座ってニコニコとすごい嬉しそうにして、笑ってくれた。純粋な笑顔に胸がいっぱいになった。この笑顔を守りたいって思った」
真剣な声に大きく心臓が音を立てた。
それと同時にユイくんが自分のジャケットをわたしの肩にかけてくれる。
汗が冷えてちょうど寒いなって感じていた時。
でも、ユイくんの話を聞いているから言わなかった。
それなのにユイくんは気づいて気を遣ってくれる。
そんなユイくんに改めて守られていると感じた。
「今日の楽しかったこと、おもしろかったこと、悔しかったこと、嬉しかったこと、表情豊かに話をすんの。悩みなんてなさそうで、この世界を綺麗だと信じているような感じで。そんな莉緒のことがかわいく思えると同時にうらやましくて、少し困らせたくなった」
「いじわるだ」
「うるさい。聞けって」
思わず口を挟むと冷たく言われる。
「はーい」と間延びした返事をして、ユイくんの言葉に耳を傾ける。
「俺はその時の悩みを全部、莉緒に話した。誰にも話したことがなかったことを初めて、小学生のガキに話したんだ」
ガキってひどいなぁ。今も言われるけど。
そう思うけど、そこは重要なところではないから聞き流す。