「でも、届いている人には届く。見ようとしてる人にしか見えない。それもすごく魅力的だと思うよ、俺は」
「え?」
「知ろうとした人だけしか知ることができない。それってすごく特別なことだと思わないか?」
わたしの隣で同じ星空を見上げながら、わたしが寂しく感じたことをユイくんは〝特別〟だと言う。
考え方が違うだけで、こんなにも感じ方が違う。
ユイくんの考え方がすごく素敵だと思った。
わたしにはできない。
だからユイくんといるとたくさん知ることができる。感じることができる。
その差に打ちのめされたりはしない。
ユイくんに強く憧れ、隣にいたいと願う。
「特別、だね」
眩い光ではなくても、そこにいる。
見たいと思う人にしか見ることのできない特別なもの。
一等星を目指して、焦がれて、落ち込んで、また目指して、それが正しいと思っていた。
そうしなくてはいけないと思っていた。
指でひときわ輝く一等星をなぞっていく。
一等星と指先を重ねても、その周りにはたくさんの光が散りばめられている。
すごく、綺麗だ。
「六等星には六等星にしかできないことがある。全部、特別だね」
「うん。全部が特別なんだよ」
ひとつひとつ、特別でできている。
この星空も特別が集まっている。
ずっと見ていると、そんな星空を切り裂くかのような光の線が走る。
一瞬何かと思い考えこみ、すぐにその正体に気づきテンションが上がった。
「あ、今の流れ星流⁉ 見た⁉」
「見たよ」
「うわぁ、初めて見た。すごいね! あ、願いごと言ってない!」
「今さらかよ」
流れ星が不意に流れたせいで、そんな願いごとの準備なんてしていなかった。
思ってたよりも長い時間、光の線が見えて長い距離を流れたというのに。
今のは願いごとを言えるくらいの時間は絶対にあったと思うのに。
「願いごとを言うのって難しいんだね」
「突然流れるからな」
「流れ星も特別だ」
星の数ほど特別はあって、何光年かけてここまで光を届けてくれている。
気の遠くなるような尊い奇跡。
きっとこれからも特別な出会いがあるんだ。
「莉緒も特別だよ」
「うん。ユイくんの話聞いてたらわたしも特別な気がしてきた」
「気がしてきたじゃなくて特別だ。俺にとって莉緒は特別な女の子だよ。昔からずっと」
見上げていた視線をユイくんへと向ける。
まだ真っ暗でユイくんの表情を見ることはできない。
けど、存在は確かに隣に感じられる。