「昔はずっと俺の後ろをついて来てたくせに今は逃げんの?」
「え……?」
〝昔〟って……。
わたしが昔よくついて行っていたのは――。
全身が心臓になったかのように、ドクドクと脈を打ち始める。
それは次第に強く速くなっていく。
もしかして……、
「……ユイくん?」
「久しぶり、莉緒」
サングラスを外しながらわたしの名前を呼んでくれたのは間違いない。
――ユイくんだ。
五つ年上のお兄ちゃんの友達で、よくわたしの家に遊びに来ていた。
かっこよくてわたしとも仲良くしてくれるユイくんがだいすきで、お兄ちゃんにひっついてユイくんに会いに行くこともよくあった。
でも、大学生になると地元を離れたからそれ以来会っていなかった。
ということは四年近く会っていないことになる。
「何で体操服なんだ?髪も濡れてるし」
「えっと……」
「まあとにかく乗って。ドライブでもしよう」
怪しいと思った人がユイくんだとわかった今、警戒心がいっきに解けた。
ユイくんに会えたことが素直にうれしい。
だけど、ユイくんが車を運転しているのは不思議な感じがする。
わたしが知っているのは自転車を全速力で漕いでいるユイくん。
時の流れを感じる……。
高校生のユイくんを思い浮かべながら、今度はすんなりと車に乗りこむ。
座席はさらっとした生地で触り心地がよかった。
ちなみに座り心地もすごくいい。
シートベルトをしめると、それを確認したユイくんは車をゆっくりと発進させた。



