「でも、戸田さんはわたしのこと本当に守ってくれた」


これは紛れもない事実。

それなら確信をもてるところだけ信じていればいい。

わかっている。
わかっているけど、気になってしまうものは気になる。

この時点でもう無限ループのようだ。

考えても意味がない。抜け出すことはできない。

考えれば考えるほど深みにはまって、同じところをぐるぐるしてしまう。

真実はわからない。
真実なんてあるのだろうか。

もうわけがわからなくなってきた。

考えすぎているのと車の揺れと学校終わりでしかも今日は金曜日で、今週の疲れがどっときているなど様々な条件が重なり、だんだんと眠たくなってくる。

瞼が重たくなってきた。

無意識に瞬きの回数が増え、だんだんと目を閉じる時間が長くなっていく。


「わたしはそんなすご、い人じゃ……ないし、いい人でもな……い……」


首がガクッと落ちてハッとしてすぐに顔を上げる。

危ない。寝落ちてしまうところだった。

両手で頬をパチパチと叩くけど、睡魔は居座っていていっこうに出て行ってくれる様子はない。

あくびを繰り返し涙が溜まって、その涙がこぼれる。
あくびだけでこんなに涙が出るなんて不思議。


「寝てていいよ」
「でも……」
「隣であくびされたらうつるだろ。寝てくれてるほうがマシ」


うつったんだ。

わたしがしたあくびにつられてユイくんもあくびをするなんて、自分が眠たくて眠気を覚ますのに必死だったから見ていないけど、想像しただけでなんだかかわいすぎて頬が緩む。


「ごめんね」
「気にしなくていいから、ゆっくり寝とけ。あとで起こすし」
「わかった。絶対に起こしてね」
「心配しなくても三時半に起こすから」
「早いね。じゃあよろしく……」


睡魔には勝てなくてそのまま目を閉じてしまった。

目を閉じて聞こえたのはいつものスリーピースバンドの爽やかだけど重みのある曲だった。

耳に心地よい甘い歌声と響くベースとドラムにリズミカルなギター。
絶妙なバランスで睡眠欲を加速させる。


完全に落ちる寸前に「おやすみ」と優しい声が届き幸せな気持ちになり、そのまま逆らわずに流されるように眠りに入った。