「不思議な雰囲気でよくわからないけど何かを常に考えている、裏をもっているような人。そう思っていたわたしを助けてくれた戸田さんと本音で話し合えた気がした。戸田さんという人に触れられた気がした」
「うん」
相槌だけ打って続きを促す。
そんなユイくんに戸田さんとの会話の内容について順を追って話をした。
覚えている範囲で細かく。
こうして思い出しながら話しても、戸田さんのことはまだまだわからない部分も多くある。
「わたしに救われたんだって言ってた。わたしもすぐには思い出せなかったのに、それで救われたって。だから、わたしのことを助けるつもりだったって」
今でもピンとこない。
当時のわたしは何も考えていないくらい何気ないようなことだった。
そのあともずっと一緒にいたわけでもないし声をかけたわけでもない。
だから、やっぱりわからない。
そこまでしようとしてくれること。体を張ってくれたこと。
戸田さんだって、後藤さんのことを嫌いとは言っていたけどそれでも一緒にいた。
でも、今はいない。
自分の友好関係を犠牲にしている。
「そこまでしてくれる理由がないと思うんだけど」
そう思うんだけど、実際に助けてくれた。
一番にあの地獄の中で味方をしてくれた。
わたしにはわからない。
後藤さんのターゲットになったのはたまたまかもしれない。
「あと気になるのがミライちゃんとのこと」
戸田さんはわたしとミライちゃんが友達でいるのは良くないって感じのことを言っていた。
仲を悪くさせるためにあの画像を?
そう疑ってしまったけど、それもたまたまかもしれない。
憶測で決めつけるのは良くない。
偶然が重なった。
始まりがそうだったから。
考えれば考えるほど疑ってしまうし、もうしかしたらって思い当たるところもいくつか出てきてしまう。
何度考え直しても疑ってしまう部分がある。
そこまで偶然が重なることがあるのかな、とか。