「今の莉緒と友達になってくれたんだ。だからそのままの莉緒でいいんだよ。無理しなくていい。莉緒のしたいように、莉緒が思うようにしたらいい」
「そんな全肯定してくれるのはユイくんだけだよ」
「そんなことない。というか、そんなこと言ったら友達に怒られるぞ」


少し低くなった声。
しまった、と思う。

ネガティブになっていた。

それでミライちゃんの時もうまくいかなかった。埋められない溝ができてしまった。

その理由はもうわかっているのに。


「そうだね。美紅ちゃんと悠里ちゃんならきっとどんなわたしでも受け入れてくれる」


わたしはミライちゃんのことを信じなかった。

それだけが原因ではないかもしれないけど、もう一緒にいられないのはそのことが一番の理由だと思う。

わたしは嫌われると思って話さなかった。
ミライちゃんも話を聞こうとしなかった。

お互いに謝ったこと。

それがすべてだ。


友達を信じていなかったというのは一番大きな溝になる。身をもって感じた。

けど、美紅ちゃんと悠里ちゃんはわたしが他人を信じられなくて素っ気ない態度だった時も笑いかけてくれた。

そんな優しい人が、わたしを頭から否定するわけがない。

わたしが信じないと誰も信じてはくれない。


「まずは自分から、だね」
「そうだな」
「もう間違えたくない。間違えても勇気を出してやり直せるような、そんな関係でいたい」
「莉緒ならできるよ」
「ユイくんはいつもそう言ってくれるね」
「俺は莉緒を信じてるから」


真っ直ぐなセリフにドキッとする。

ユイくんは不意に直球ど真ん中に言葉を投げかけてくる時がある。

そんなに直球で言われると誰でもドキッとしてしまう。

クールだったりけだるげだったり、かと思えば熱かったりとユイくんはいろんな面をもっている。どのユイくんも優しいことに変わりはないけど。

恥ずかしくてユイくんの言葉に言葉で返すことはできず、照れ笑いをしてしまう。

体に力が入り暑くなったから、足を前に出して思いきり力を抜きリラックスする。


「あとね、もうひとつ聞いてほしいの」
「いいよ。いまから高速乗るから好きなだけ話して」


ウインカーを左に出して曲がり、そのまま道なりに進んでいく。

三百六十度ゆったりとしたカーブで上がり、高速に入る。

そこからはスピードが徐々に上がっていく。

街灯をいつも以上に速いペースで追い越していき、光の残像が線のように残る。

近未来な光景だな、と思ったがそれは想像のしすぎかもしれないとも思いなおし、でも今はそんなことはどうでもいいのですぐに話を始める。

戸田さんについてのことを。