どれだけ見ていたかわからない。


「そろそろ行こうか」


ユイくんのその声がなければずっと見ていたかもしれない。

最後に名残惜しくてスマホで星空の写真を撮った。

最近のスマホは高性能ですごい。
実際の星の数よりだいぶ減ってしまうけど、それでも星空を少しだけ切り取ることができた。

写真に写らないほどの輝きの星もある。

けど、それでも確かにそこにあることはわたしが覚えている。


「出発していいよ」


まだ名残惜しいけど、ユイくんが行きたいところがあると言っていたから。

ユイくんが自分ではっきりと行きたいところがあるって言うのはめずらしいから気になる。

今まではどこかに行くのも、なんとなくの流れで行っていた。

だからすごく楽しみだったりする。

星空はどうしても引き込まれるけど、ここでずっと止まっているわけにはいかない。


ライトをつけて再び動き出した車。

山を下りている時にも何度か鹿に遭遇したけど、車のことは気にしていなかった。


「友達関係って不安定だね。小学生の時とかは謝ればすぐに仲直りして、その瞬間から遊んで笑いあって何事もなかったかのように一緒にいることができたのに」


山を下りて中学校やアパート、住宅などが点々とある細い道を通る。

もう鹿も出てこないから脱線せずに話をすることができた。

今はミライちゃんのことを話したところ。
ミライちゃんとはお互いに謝ることができた。

それでももう一緒にいることはできない。

悪いところを認め合って、言葉にしたのに仲直りできないこともある。

ただ気持ちを伝えあっただけ。
そういうこともあるんだと知った。


「友達って曖昧なんだね」


繊細な関係だと学んだ。


「だからこそ、今の友達はもっと大切に、丁寧に、時には大胆に積極的に関わっていきたいって思ったんだけど……」


これでいいのかな?

関わり方がわからない。

美紅ちゃんと悠里ちゃんと、これからも一緒にいたい。

一緒にいるためにはどうしたらいいのかな……。


「莉緒でいるだけでいいんだよ」


わたしの聞きたいことが当然のようにわかったユイくんが口を開く。

前も言ってくれたけど、今は意味がわからなくてユイくんを見る。

ハンドルを両手で持ち軽く動かしているのがシルエットでわかる。