カバンを肩にかけて最悪な気分のまま学校を出た。
グラウンドでは部活動をする声、校舎からは吹奏楽部の高らかなトランペットの音がよく響いている。
……わたし、何してるんだろう。
どうしてわたしがこんな目に遭わなきゃいけないのだろう。
我慢なんてする必要はあるのだろうか。
こんな救いのない世界で、いったい何ができるというのだろう。
我慢をして何を待てばいいというのだろうか。
意味もない我慢をして、平穏が戻ることを期待して待っていた自分が馬鹿みたいだ。
もう、終わってしまえばいいのに。
強く拳を握り締める。
終わらないなら終わらせよう。
自分の手で。
未練もない。
こんな世界……。
―――キキィッ。
「乗って」
突然目の前に耳障りなブレーキ音をとどろかせながら、見覚えのない黒のピカピカの車が停まった。
驚いて思わず俯いていた顔を上げ、開いた窓から声の主を見る。
傾いた日が逆光で見えたシルエットと声から男性だということはわかる。
そんな彼はサングラスをかけているから怪しい人かもしれない。
「ほら」
だけど、低くぶっきらぼうなのに優しさも感じられる透き通った声に、どこか懐かしさをおぼえた。
「早く乗って」
その場に立ち尽くすわたしを急かすように、運転席から手を伸ばしてドアを開けた。
ドアがぶつかりそうになったことでやっと足が動き一歩下がる。
それと同時に、逃げなきゃ!と体の向きを変えた。