「また明日」
「あ、また」
「うん」
急いでいるせいで挨拶もいきなり、美紅ちゃんと悠里ちゃんも勢いで返事している感じだったけどそのまま教室を飛び出す。
早く話したい。
そればかり。
小走りで三〇八の教室に向かい、ドアを開ける。戸田さんはまだいなかった。
当然だ。
同じクラスだから授業が終わるのも同じタイミング。
わたしは終わってすぐここに来たのだから、戸田さんがいなくても不思議ではない。
息を整えながら教室の奥へと足を進めた。
窓側の適当な席に座って外を眺めていると、少ししてドアが開かれる。
振り返ると戸田さんが立っていて笑っていた。
「早すぎ」
「待ちきれなくて」
わたしの返事にまた笑って、窓側に来て窓のさんに軽く腰掛けた。
その瞬間、少しだけ雰囲気が変わった気がした。
「あれでよかったの?」
前触れもなく投げかけられた質問に一瞬考えるけど〝あれ〟が何を差しているのかすぐにわかった。
「十分やりたいようにできたよ」
「ぬるくない?」
「でも嫌がってたでしょ?」
「まあね」
きっと後藤さんにとって一番ムカつくことをした。
後藤さんのプライドを傷つけることをした。
自分がしたことをやり返されたほうが楽になるんだろうなって思う。
罪悪感があるように見えたから。
みんなにいろいろ言われて、鋭い視線を向けられて、空気のようになって、今まで自分がしてきたことの重みを知っていっているように感じた。
表情が違ったから。
「ちょっと甘すぎるとは思うけど。後藤は時田さんが思っているほど優しい心は持っていないよ」
「うん。でも少しでも感じたからもういいかなって」
「やっぱり甘すぎる」
戸田さんはあまり納得していないように見える。
どうしてここまで言ってくれるんだろうか。
ずっと気になっていた。