「莉緒がんばったじゃん」
「堂々と言えるってすごいよ」


悠里ちゃんと美紅ちゃんが褒めてくれる。

わたしからしたらそんなことを言ってくれる二人がすごいと思う。

クラスで浮くような、下手したらまたいじめられるような粋がった行動をした。

なのに、受け入れてくれる人がいるというのは本当に奇跡みたいなこと。

わたしは恵まれている。
素敵な友達がそばにいる。

思わず目頭が熱くなり鼻ツーンとなった。

それをぐっとこらえる。


「ありがとう」


お礼を言うと不思議がられてしまった。

二人は素で優しくできてしまう人なんだ。

変わらず今日も三人で過ごす。

あんなに勇気を出して伝えたあとだけど教室の雰囲気はいつもと何も変わらない。

みんなそれぞれの日常を送っている。


「放課後、三〇八で待ってるから話そ」


移動教室で美紅ちゃんと悠里ちゃんと次の教室に向かっていると、すれ違いざまに小さいけどはっきりとした言葉が耳に届いた。

通りすぎて行った後ろ姿を確認すれば戸田さんだった。

わかった瞬間ドキドキと心臓が音を立て始める。

わたしも戸田さんとは話したいと思っていた。
聞きたいことがあった。

ソワソワした落ち着かない気持ちで放課後を待つ。

早く時間が過ぎてほしいと思う時ほど、まったく時間は進まない。

もう十分経っただろうと時計を見ても、まだ二分しか経っていなかったりする。

時間の流れとは気持ち次第で早くも遅くも感じられる。

カタツムリが進むくらいゆっくりと時は進み、ソワソワとウズウズでおかしくなりそうだったけど、最後の授業の終わりを知らせるチャイムでやっと解放された。

カバンに雑に筆箱や教科書を詰め込む。