浦川くんが東京に行った後、私は宣言どおりに学校への登校を再開した。

 当初は目眩や吐き気に悩まされたけど、本格的に冬が始まり受験が目の前に迫るころには、もう懐かしい遠い昔のことみたいに克服することができていた。

 家族についても、私が登校したことによって少しずつ元の形を取り戻し、いつの間にか家出した弟も生意気に私の部屋に居座るようになっていた。

 そして――。

 三学期が始まる前の夜、もう諦めかけていた私に、浦川くんから突然メールが届いた。

 『あの日伝えたかったこと』という律儀なのか大胆なのかわからない件名に笑いつつ、そっと胸にしまっていた気持ちが再び熱を帯びるのを感じた。

 浦川くんは東京でもうまくやっているみたいで、メールの内容から、微笑む浦川くんの姿が想像できて私もつい嬉しくなった。

 日常の内容から始まったメールは、やがてとんでもない内容へと変わっていく。なんと浦川くんはこっちの高校を受験するらしく、春から再びお父さんと暮らすことにしたという。

 どうやらお父さんは思ったより早く社会復帰したみたいで、二度と過ちを起こさない為に、浦川くんとの同居を受け入れてくれたとのことだった。

 メールの内容に胸のときめきが収まらない中、唐突に綴られた最後のメッセージを読んで、私の思考と時間は完全に停止した。

『約千四百万人の東京の中からは見つからなかったけど、四万八千人の町の中からは、本気で好きな人に出会えることができ ました』

 浦川くんから遅れて届いた告白。あの日伝えたかったことをアレンジしたと思われるメッセージを読み終えた時には、両耳がじんじんするくらい熱くなり、視界がぼやけるぐらいに頭が熱っぽくなっていて、ベッドでマンガを読んでいた弟に冷たく睨まれることになった。


 ――浦川くん、帰ってくるんだ

 にやけが止まらず弟に枕を投げつけた後、気持ちを落ち着かせながら返信を書くことにした。

『Re:あの日伝えたかったこと』

 私も、浦川くんにまた会える日を楽しみにしています――。


 ~了~