どうやらそのまま泣き疲れて眠ってしまっていたようで、気が付いた時には部屋は暗くなっており外は夕焼け色に染まっていた。
自分の身に何が起こったのか、しばらくボーッとしてるうちに午前中の出来事が蘇る。
また震え始める身体を自分の両腕で抱き締めながらベッドに座り、深呼吸を繰り返す。
どんなに辛い記憶でも、思い出したい。そう皆に宣言したのは私なのに。
襲ってくる恐怖心に押し潰されそうになってしまった。
ここで負けるわけにはいかない。……でも、怖い。
頭の中で繰り広げられる葛藤。そうしているうちに喉の渇きを感じて、震える足に鞭を打って部屋を出て階段を降りる。
どうやらまだお母さんは仕事から帰ってきていないようで、リビングも暗いままだった。
滲む冷や汗を拭いて水を飲んでから部屋に戻り、お母さんに新しく買ってもらったスマートフォンを見るといくつか通知が来ていて。
"奈々美、家での生活はどうだ?何かあったらいつでも話聞くから、電話して"
龍之介くんから来ていたメッセージ。
それを見て、スッと心が軽くなるような気がした。
「……会いたい」
無意識に押した通話ボタン。
切ろうかとも思ったものの、すでにコール音が鳴り始めていたためとりあえず耳に当ててみる。