三日後。


朝、仕事に向かうお母さんを見送ってから家に戻って二階にある自分の部屋の中を物色する。


この家に戻ってきてから、私は毎日記憶に繋がる手がかりを探していた。


目ぼしいものはあまり見つからないため片付けも兼ねて色々見ていた時。


家のインターホンが鳴って、ゆっくりと階段を降りる。


モニターを見ると、そこには一人の女性がいた。


その女性がカメラに向かって顔を上げた瞬間。



「ヒッ……!?」



その、少し垂れ下がった皺のある奥二重の目と白髪混じりの髪の毛には、見覚えがあって。


急に痛む頭。全身に鳥肌が立って、震えが止まらなかった。


立っていられなくなり、そのまま逃げるように後ろに尻餅をつく。



「あっ……え、あ……いやっ……」



依然として突き刺すようにこちらに向けられた視線。


言葉にならない声は、まるでモニターの向こうにも聞こえているかのような錯覚がした。


それから何度も鳴るインターホン。


次第にドアをガチャガチャと何度も引く音が鳴り、


さらにはドアを手で叩くような音も聞こえて。



「いるんでしょ?奈々美ちゃん。開けて!開けなさい!」



その声から逃れるように、思わず手で塞いだ両耳。


膝を立てて、そこに頭を埋めて。いつのまにかこぼれ落ちていた涙に、グッと下唇を噛む。


「お母さん……龍之介くんっ……」



無意識に呟いた声は、誰にも拾われることなく地に落ちていき。


声が止んだ一瞬の隙に、逃げるように階段を静かに駆け上がり自分の部屋のベッドの中に潜り込んで枕で頭を押さえた。