じゃあその事故というのはどういうものだったのだろうか、聞こうにも"記憶に関することは急がないほうがいい"と言われてしまい、誰も教えてはくれなかった。
交通事故に遭ってしまったのだろうか。
怪我の具合から見るに、右半身に大きな衝撃があった様子。
とは言え、しばらく入院になるらしいからいつでも聞くタイミングはあるだろう。怪我の具合が少し落ち着いた頃にもう一度聞いてみよう。
もしかしたら、記憶が戻った時にそれも全部思い出すかもしれないし。
朝から続いた検査が一区切りついた頃には、既に窓の外はオレンジ色に染まっていた。
季節は初夏。カレンダーによると、六月の中旬だ。
「今年も暑くなりそうだね」と立花さんがため息混じりにこぼしていた言葉を思い出す。
私はそのオレンジ色を食い入るように、しばらく見つめていた。