翌日の朝。


昨日よりは落ち着いて対面することができた私は、ゆっくりとお母さんと会話をした。


病院でのできごとや、お母さんとお父さんの話も。記憶がなくなっており、最近夢で二人の姿を見ることも。


夢を見ると知ったお母さんは驚きつつも嬉しそうに頷いてくれた。


私の両親は、父親が外資系の商社に勤めており母親が海外に向けて事業を展開している経営者。


二人とも昔から海外や地方への出張が多く、私を二軒隣のお家に預けることが多かったらしい。その家は子どもが巣立った後で、定期的に私を預かることを快く引き受けてくれたそうだ。


私が中学生になった頃には父親の海外赴任が決まり、追いかけるように母親も海外に仕事の拠点を移したらしい。


私は何度もついて行きたいと言ったらしいが、仕事中に治安の良くない海外で私を一人にするくらいなら、と日本に留まらせたのだとか。



「それがこんな結果になってしまったのかと思うと、あなたには本当に申し訳ないことをしたと思ってる。今まで本当にごめんなさい」


「……」



記憶が無い状態で謝られても、正直ピンと来ていなくて。


もし記憶が戻ってからもう一度謝られたとかしたら。私は平常心でいられるのだろうか。


それから中庭や院内を少し散歩して、これからのことについてを話し合う。


デイルームに戻ってきた頃には一時間ほど経っていた。