そんな今日は、ついにお母さんが私のお見舞いにくる日だ。
立花さんに言われた時は驚きの方が大きかったけど、当日を迎えて朝からずっとそわそわしている私がいた。
今日ということしか知らなくて、何時に来るのかはよくわからない。
いつも通りリハビリをこなして部屋に戻る。
ドアをノックする音が聞こえて、立花さんが私を呼んだのはそんな時だ。
美優ちゃんに断りを入れて病室を出て、立花さんと一緒にデイルームへ向かう。
柔らかな光が差し込むデイルームの奥のテーブル席で、一人の女性が座っていた。
茶髪のショートカットが上品にさえ感じる後ろ姿にどこか懐かしさを覚えながらも
「奈々美ちゃん」
立花さんに促され、一つ頷いてその女性の元へ向かった。
「……あ、の」
「……奈々美!」
パッと振り向いたその女性の顔を見て、私は目を大きく見開いた。
しかしすぐにその女性が立ち上がって私にぎゅっと抱きついてきたため、条件反射でそれを受け止める。
「奈々美、ごめんね。今まで一人にして、本当にごめんね……」
私の肩口に顔を埋めて涙を流す女性。
先ほど見たその顔は、私が夢で見たあの女性と同じものだった。
……じゃあ、やっぱりこの人がお母さん。そして、あの夢は私の幼い頃の、記憶。
その瞬間、再び強い頭痛がした。