誰にもぶつけることができない焦り。


いつも通り学校に行って勉強して、部活で走って練習してる皆が羨ましくて。


それに早く追いつきたくて、走ることを諦めたくなくて勉強してるのに。


笑顔の裏で、美優ちゃんはどれだけ苦しんで悩んでいるのだろう。


……私は、自分のことしか考えてなかった。


美優ちゃんが明るく元気に笑ってるから。前向きに頑張ってるんだろうって。そう思ってた。


でもそんなの、違う。


もしかしたら、寝る前にカーテンの向こうで泣いていたのかもしれない。


もしかしたら、検査やリハビリのたびに思うようにいかなくて苦しかったのかもしれない。


勉強に集中することで、不安な気持ちを考えないようにしていたのかもしれない。


そう思ったらすごく苦しくなって。


ちょうどリハビリに行っている美優ちゃんのベッドに視線をやる。



「でも、これはあいつが乗り越えないといけないことだから。奈々美が深く考える必要は無いよ」


「……でも」


「奈々美だってたくさんのもの背負ってるだろ。これ以上は何も背負う必要は無い。だから今は自分のことだけ考えてて」



きっと、美優ちゃんが私に何も言わないのは私に心配かけたくないから。


私だってそう。皆同じなんだ。


それに美優ちゃんには龍之介くんとそれから翼くんもいるから大丈夫だろう。