そんな中、午後から美優ちゃんに面会客が訪れた。
「美優!」
「来たよ、調子どう?」
「え、美優勉強してんの!?やばっ!」
以前も来た部活動の仲間のよう。
夏休み中の部活帰りなのだろう。ジャージを着ており、皆小麦色にこんがりと焼けている。
美優ちゃんが勉強しているのがよっぽど見慣れないらしく、見つけるや否や美優ちゃんの周りを囲んで喋り始めた。
私はそっとカーテンを閉めようと手を伸ばす。
しかし、ちらりと見えた美優ちゃんの表情が気になってしまい、手が止まった。
「私だって勉強くらいするよ。ほら、一応受験生だし?」
そう言って無邪気に笑っているものの、なんだかいつも違う気がして。
「いやー、せっかく現実逃避してるのに!思い出させないでー」
「そういえば休み明けテストあるしね。あれ内申に直結するんだっけ?やめてほしいー」
友達の嘆きに、ふとした瞬間になんとも言えない表情をする。
しかし、周りの子たちは誰一人としてそれに気が付かず。
それどころか、寄ってたかって美優ちゃんのノートを覗き込んでいく。
「でもさ、なんか美優が真面目に勉強してるのとかちょっと見慣れ無さすぎて違和感あるかも」
「わかるっ、いっつも一夜漬けで赤点ギリギリなのにね」
「……ははっ、だよね。私も自分でやってて違和感しかない」
次第に美優ちゃんも、同調するように笑った。
それがどうも居た堪れなくて。
でも、ここで変に口出ししたら美優ちゃんの立場も無くなってしまう。