そしてその翌日。
約束通り、龍之介くんは美優ちゃんの教科書やらノートやらを大量に持ってきた。
そして自分が使っていたという参考書とワークもあり、そこには簡単に暗記できるように赤シートも添えられていた。
「ありがとうお兄ちゃん!」
「あぁ、ちゃんと勉強しろよ」
「もちろん。早速今からやろーっと」
いそいそとテーブルを出して教科書を広げた美優ちゃん。
数日前に学校の友達が届けてくれたらしいプリントも合わせて広げていた。
シャーペンを持つこと五分。
「……わっかんない!」
「早えなオイ!」
美優ちゃんは驚きの速さで降参した。
「だってわかんない!」
「わかんないじゃねーよ、考えろよ」
「考えてもわかんないんだもん!」
「絶対問題文読んでねぇよな!?」
「読んでるよ!」
始まった兄妹喧嘩を横目に、私は龍之介くんが持っていた手作りの英単語帳を奪い、一つずつ目を通していく。
「……activity……動作。advantage、利点。aid……なんだっけ、助ける、だっけ?次が───」
思いの外すらすらと出てくる答え。
一ページ捲る度に「あ、合ってた」と漏らしながら進める。
それを見られていたのか、「奈々美ちゃん!」美優ちゃんが身を乗り出すように私を見てきて。
「奈々美ちゃん!英語教えて!」
「え?」
「ここ!お願い!」
「あぁ、うん。えっと……」
龍之介くんに単語帳を返して、美優ちゃんに示された箇所を和訳していく。
その後も理科や数学など、わかる範囲で美優ちゃんに勉強を教えていく。
どうやら、私はそこそこ勉強ができる方らしい。
「ありがとう奈々美ちゃん!すっごくわかりやすかった!またお願いしてもいいかな?」
「うん。私で良ければ」
新たな収穫を得て、嬉しい気持ちだった。