日が登って朝になってから、夢で見た話はすぐに立花さんに伝えた。
立花さんから東海林先生に伝えてくれたらしく、少し様子見してみようと言われたらしい。
少し昔の私に近付いた気がして、心臓がバクバクする。しかし頭の中ではまだ情報の整理が追いついておらず、放心状態が続いていた。
「奈々美ちゃん?」
「……ん?どうかした?」
「ううん。奈々美ちゃんこそ、ずっと考え事してるみたいだけど、なんかあった?」
美優ちゃんに不思議そうに見られて、慌てて笑って首を横に振った。
「大丈夫。外暑そうだなって思ってただけ」
「そうだねー。今日はお兄ちゃん、夏期講習だから来れないって言ってた」
「そうなんだ。そっか、夏休みでも学校あるのか……」
自分が高校に通っていた記憶が無いため、よくわからない。
心の中で頷きながら納得していると、美優ちゃんはがそういえば、と口を開いた。
「奈々美ちゃんの高校は?」
「え?」
「夏期講習とか、やっぱりあるの?」
聞かれて、一瞬返事に困って固まった。
「ていうか、そういえば奈々美ちゃんって高校どこなの?」
「え、っと……」
「私ね、お兄ちゃんと同じ高校行こうと思ってるの。そこね、陸上部がとっても強いんだ。だから私もそこで練習してみたくて」
「そ、そうなんだ……」
「うん。でもね、練習厳しいみたいでさぁ───」
内心、とても焦った。
美優ちゃんは私の高校のことなどどうでも良くなったのか、龍之介くんの通う高校の話から自分の中学の話、陸上部についての話とどんどん派生していく。
終いには
「あれ?何の話してたんだっけ?」
と明るく笑っており、私はそれに
「私も忘れちゃった」
と小さく笑った。