病室には美優ちゃんと龍之介くんの姿は無く、ベッドに戻ったところで立花さんは病室から出て行った。


私は引き出しからノートを取り出し、今東海林先生と立花さんと話した内容をつらつらと書いていく。



"記憶を取り戻すためには、引き金が必要"


"私の場合は、それは風なのではないか"


"二週に一回、立花さんに協力してもらう"


"カウンセリングって、いったい何をするのだろう"



左手で文字を書くことにも大分慣れてきたためか、 最初の数ページと比べるとその変化は歴然としていた。



"東海林先生と立花さんは、優しすぎるくらいに優しい"


"でも優しいで言ったら、龍之介くんも美優ちゃんも同じくらい優しい"



そんなことを書いて、ノートを閉じて再び引き出しの中にしまう。



「……ふわぁ……、早起きしすぎたかな……」



病室には誰もいないけれど、なんとなく下を向いてあくびにより大きく開く口元を隠す。


どうせ二人もいないし、ちょっと寝よう。


ゆっくりとベッドに横になると、すぐに眠りに落ちた。