「お兄ちゃん、おかえり」
「……ただいま」
「何買ってきたの?」
「コーラ」
「えー、ずるい。私も飲みたい」
「それはちゃんと立花さんの許可取ってからにしろ」
「はーい」
飲み物を買って戻ってきた龍之介くんは、いつも通り美優ちゃんに呆れた視線を送っている。
私の方をちらりと見るから、目が合う。
口パクで、"美優には黙っとけ"と言っていた。
それに頷いて三人で談笑しているうちに昼食の時間になり。
運ばれてきたご飯を美優ちゃんと一緒に食べる。龍之介くんはコンビニで飲み物のついでに買ってきたらしいパンを食べていた。
「奈々美ちゃん、検査の時間だよ」
「はーい。じゃあ二人とも、行ってくるね」
「行ってらっしゃい」
「行ってら」
二人に手を振ってから、立花さんと共に検査に向かう。
今回もいろいろな検査をしたものの、どうやら倒れてしまったことのはっきりとした理由や原因はわからないそう。
特にどこにも異常は見られないのだと言う。
「もしかしたら、何かその時に記憶に繋がるものがあったのかもしれないね」
「記憶に、繋がるもの」
「そう。思い出すための、引き金のようなもの」
「引き金……」
あの時のことを、もう一度思い出してみた。