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「あれ?お兄ちゃんは?」
「あ、美優ちゃんおかえり。龍之介くんなら飲み物買い忘れたって言ってコンビニ行ったよ」
「え?そうなの?」
別にお茶くらいあるのに。なんて笑っている美優ちゃんに、少し罪悪感が芽生える。
自分が記憶喪失だと打ち明けた後。
昨日のことや今までのことを話すと、龍之介くんは"こういう時にどんな言葉をかけていいのかわからないけど"と前置きした上で、
"俺に協力できることがあれば、何でも言って"
と私の左手を握ってくれた。
飲み物を買いに行ったのは本当だ。多分、一度頭の中を整理しているんだと思う。当たり前だ。今まで楽しく喋ってた人にいきなり記憶喪失だと打ち明けられても、ピンと来ないだろう。
龍之介くんは私が倒れるところを目の前で見てしまっているから驚きながらもすぐに理解して納得してくれたけれど。
それでもその衝撃は大きかったことと思う。
打ち明けたのは間違いだったんじゃないか。
一瞬そう考えもしたけれど、
"言われなきゃわかんなかったってことは、ずっと一人で抱え込んでたってことだろ?奈々美、お前それだけ無理してたんじゃないか?"
と言われた時に、少しだけ泣きそうになったのは秘密。
"そろそろ美優も戻ってくる頃だし、頭冷やしにちょっと飲み物買ってくる"
そう言って病室を出て行ったのが、つい数分前のことだ。