「……昨日のこと、聞いてもいいか?」
「……うん」
心配をかけてしまった手前、話さないわけにもいかないだろう。
そう思って頷く。
引き出しの中からノートを取り出して、龍之介くんに渡した。
「……これは?」
不思議そうに表紙と裏表紙を見比べる龍之介くんは、私に怪訝そうな顔を向ける。
しかし、
「私の記憶を取り戻すためのノート」
そう伝えると、
「……記憶?」
またよく理解できなかったのか顔を上げた。
「……私ね、この怪我する前の記憶が、一切無いの」
そして一瞬で目を見開いて、声を詰まらせる。
「……え?」
「私、解離性健忘っていう……記憶喪失なの」
龍之介くんは、そのまま言葉を失ったかのように呆然としていた。