「体調はどう?」
「うん。頭痛も落ち着いたし元気だよ」
「良かった」
私の顔を見て安心したらしい龍之介くんは、いつも通り私と美優ちゃんの間に座って息を吐く。
「あ、忘れてた。はい」
「ありがとお兄ちゃん」
いつも通り着替えを持ってきた龍之介くんに、美優ちゃんはもう慣れてしまったようで素直に受け取る。
「聞いてよお兄ちゃん、今日の朝ご飯ね、またトマトサラダ出たんだよ?私トマト嫌いだから抜いてって散々立花さんに言ったのに」
「だから昔から好き嫌いすんなって母さんが言ってただろ。病院だってお前の好みに合わせて飯作ってるわけじゃねぇんだから」
「だって、嫌いなものは嫌いなんだもん」
「ガキかよ……」
そんな二人の会話を聞きながら、私がクスクスと笑うまでがワンセット。
本当、仲が良くて羨ましい。そう思いながらたまに会話に入っていると、病室のドアが開く。
「美優ちゃーん、検査の時間だよ」
「えー、もうそんな時間?」
「そんな時間。あら龍之介くん、いらっしゃい」
「どーも」
すっかり立花さんとも打ち解けてきたらしく、軽く挨拶した龍之介くんは車椅子に乗った美優ちゃんを送り出す。
そうして私の隣に戻ってきたかと思うと、さっきまでの明るい顔とは違って、神妙な表情になった。