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「ゆっくりでいいよ。もし体調が悪くなるようならすぐに中断しよう」
「はい」
翌日。頭痛も落ち着いたため、朝から診察室で東海林先生と向かい合っていた私。
昨日のことを覚えている限り、事細かく話す。
東海林先生は数回頷きながら親身に聞いてくれて。
立花さんは私の話す内容をパソコンに打ち込んでいた。
「もしかしたら、事故に遭った時の記憶なんじゃないかなって、思って」
「……きっとそうだね。怪我した時の記憶だろう。その他は何か思い出したことはないかい?」
「はい。今のところはそれだけです」
朝起きて、引き出しの中のノートに鉛筆を走らせたのは正解だったようだ。
頭の中が整理されたことで、スムーズに話ができた。
「わかった。一応検査もするから今日と明日のリハビリは無しにしてもらったからね」
「あ、はい。わかりました」
「午後から検査の予約入れとくから、後で声掛けるね」
「はい」
どうやら昨日の一件でまだ完治していない右手を無理に使ってしまったらしく、ズキズキとした痛みがある。
後でこれもレントゲンを撮られるだろう。悪化していないことを祈る。