「桐ヶ谷さん、体調はどうかな?」
「体調……ちょっと頭痛がするかも」
聞かれるがままに答えた。
「そうか。他には無いかい?」
「他は……大丈夫です」
東海林先生は聴診器で診察を始める。
そのヒヤッとした冷たさに、また少し頭痛がして眉間に皺を寄せた。
「奈々美ちゃん、あなたさっき中庭で倒れたの。覚えてる?」
立花さんの言葉に、うっすらと頭の中に花壇が浮かぶ。
「中庭……?あ、そうだ。龍之介くんと一緒にいて……」
それで、フェンス越しに景色を見ようとして、急に風が吹いて────
ズキッ、と。また頭が痛む。
けれど、まだ我慢できる痛みだった。
「落ち着いたら、少し話をしよう」
「……はい」
東海林先生に返事をする。
「今日はもう休みなさい」
どうやら時刻は既に夜らしい。穏やかに笑った先生に頷くと、東海林先生と立花さんはそのまま病室を出て行った。