「さっきの子、男の子一人でお見舞いに来るなんて珍しいね」



ふと思ったことを聞くと、龍之介くんは首を傾げた後に「あぁ……」と頷く。



「アイツ、美優の好きな奴」


「え!?そうなの!?」



なんてことないように言っているけれど、私にとっては衝撃的な発言だ。



「翼っていうんだけど、保育園の頃からの知り合いで、小学校の頃からミニバスやってて今もバスケ部。あの二人昔から両想いなのにアイツらだけ気付いてないから全く進展ないんだよ。見てるこっちがモヤモヤする」



呆れたような顔に思わず笑う。



「ふふっ、だから私のこと連れ出して、二人きりにさせてあげたんだね」


「……そんなんじゃねーし。美優と翼がデレデレしてるとこなんてキモくて見てらんねーし。目の前でイチャつかれたらたまったもんじゃねーし。……何笑ってんだよ。奈々美だってあそこに取り残されるの嫌だろ」


「ははっ!まぁ確かにそういうことならちょっと気まずいかも。でも龍之介くんって、口悪いけど結構優しいよね」


「口悪いは余計だ。それに俺は人見知りなだけでいつでも優しい」


「ふふ、それ自分で言う?」



得意気な声に、少しからかいたくなった。



「それに龍之介くんって美優ちゃんのことも大好きだよね」


「なっ……うるせっ」



否定することなく照れたようにそっぽを向いてしまった龍之介くんに、堪えきれなくて吹き出してしまう。