それから一週間が経過したある日。
「風が気持ちいいね」
「そうだな。もうすぐ夏だし。今年も暑くなりそうだな」
「うん」
私は夏休みに入ったと言う龍之介くんに車椅子を押してもらって、朝から中庭に散歩に出ていた。
病院の十階の一番奥にある、大きな扉。その向こうには患者が自由に出入りできる中庭があり、中央には大きな花壇。そこには色とりどりの花が咲いていた。
ベンチが数個設置され、患者と見舞客の憩いの場としても利用されているらしい。
フェンス越しに見える景色は住宅街のよう。
天気の良さもあり、見晴らしが良くてとても綺麗だ。
すでにたくさんの患者さんたちが談笑しているのを横目に、私たちは日陰になっているベンチに向かい、その隣に車椅子を止めてもらう。龍之介くんが横にあるベンチに腰掛けた。
「こんな綺麗な場所が病院の中にあるなんて知らなかった」
「俺もつい最近知ったんだよ。土日は結構混んでるっぽい」
「土日はお見舞いの人多いもんね」
私はほとんど病室から出ていなかったためこの中庭の存在自体を知らなかった。
ついさっきまで病室で美優ちゃんと龍之介くんの三人で喋っていたのだが、美優ちゃんの学校の友達が訪ねてきたので龍之介くんが連れ出してくれたのだ。
会釈した時の一瞬しか見ていないけれど、とても爽やかなスポーツマン風の男の子だったことを覚えている。