「おかえり美優ちゃん」
「お兄ちゃん、奈々美ちゃんとちゃんとお話しした?」
「あぁ、したした。したよ。だから今こっちにいるんだろうが」
「そっか!良かった。お兄ちゃんあんまり友達いないみたいだし、奈々美ちゃん、迷惑じゃなかったら仲良くしてあげてね」
「……お前なぁ。一言余計なんだよ。別に俺ちゃんと友達いるし」
龍之介くんの呆れたような視線にも動じない美優ちゃんは、私にニヤニヤした視線を送る。
「でもほとんど毎日私のお見舞い来てくれるんだよ?友達いなさそうじゃない?」
「ふざけんな。誰が母さんの代わりにお前の服届けてると思ってんだよ」
「はーい。いつも感謝してますー。どーもアリガトウゴザイマス」
「お前俺のこと馬鹿にしてんだろ」
「そんなことないよー、尊敬してるよー、感謝してるよー」
「……はぁ」
そんなやりとりに、思わず笑ってしまう。
クスクスしていると、二人揃ってこちらに視線を向けた。
「二人とも面白いね。……龍之介くん、私あんまり友達いないし、龍之介くんも仲良くしてくれると嬉しいな」
「……奈々美まで……ったく、仕方ねぇなあ」
照れているのか、雑に頭を掻く龍之介くんは丸椅子を持って美優ちゃんのベッドの方に戻る。
車椅子からベッドに移るのを手伝っているようで、時折からかわれているのか「お前はうるさい」と頰をつねっては「痛い痛い」と美優ちゃんが騒いでいた。