翌日からはお互いに検査だったりで話す時間は限られたものの、就寝前には決まってカーテン越しに小声で会話をしては夜勤担当の看護師さんに怒られたりもした。


そんなある土曜日の午前中。珍しく病室が賑やかだった。



「美優!お見舞いに来たよー」


「え!皆で!?忙しいのにありがとう!」


「乙坂、調子はどうだ?」


「先生まで。うん、まだ痛いけど、ここに運ばれた時よりは大分マシかな!」



どうやら中学校の部活動の仲間と、その顧問の先生らしい。


私はそっと会釈してから、カーテンを閉めた。



「それより、大会どうだった!?」


「じゃーん!アツシが新記録だしたんだよー!」


「えー!すごい!」



美優ちゃんと他の子達の会話は当たり前だが筒抜けで、私はそっとテレビの電源を入れてイヤホンを耳につける。


それは美優ちゃんのお兄ちゃんである龍之介くんが来る時も。美優ちゃんのご両親や親戚が来る時も同じ。


何があるわけではないけれど、美優ちゃんのお見舞い客が来る時は必ずそうしていた。


特に何か美優ちゃんから言われたわけではない。ただ、なんとなく家族の時間だったり友人との時間だったり。


美優ちゃんには元々過ごしていた乙坂 美優としての時間があって、それは私と過ごす今の時間とは別の世界だ。私の知らない世界。本来ならば交わることが無かったはずの世界。


そこに私は入ってはいけないんじゃないかと思ってしまって。


むしろ美優ちゃんは気にしなくて良いと言ってくれるけれど、所詮私は他人なんだから、と私が気になってしまう。