「……あ、どうも」
気まずそうに会釈されて、私もそれに「こんにちは」と会釈を返す。
「お兄ちゃん!もうちょっと愛想良くできないの!?」
「っるせぇな。俺は人見知りなんだよ」
「もー……奈々美ちゃん、ごめんね。この人私のお兄ちゃんなの」
「初めまして。桐ヶ谷 奈々美です」
「……初めまして。美優の兄の乙坂 龍之介です」
人見知りだと言ったのはどうやら嘘でもなんでもないらしく、戸惑ったように名前を言ったっきり彼は黙ってしまい。
「……じゃあ、俺もう行くから」
と気まずそうに病室を出て行ってしまった。
「あ!ちょっとお兄ちゃん!……もー、ほんとごめんね奈々美ちゃん。うちのお兄ちゃん、人見知りで全然愛想無くて」
「ううん。気にしてないよ」
美優ちゃんは申し訳なさそうに言うけれど、私は本当に全く気にしていなかった。
急に見知らぬ患者と目が合って会話しろなんて言われても、普通戸惑ってしまうだろうし。
「お兄ちゃんね、私の一個上なんだ。だから奈々美ちゃんと私のちょうど間なの」
「そうなんだ。美優ちゃんとお兄さんって、結構そっくりだったね」
「えー、そうかな?小さい頃は確かによく言われてたけど。どの辺が似てる?」
「うーん、目かな。睫毛が長くてぱっちり二重のところ」
「あぁ、それは多分お母さんに似たんだと思う」
「そうなんだ」
そんな他愛無い話をしているとあっという間に食事の時間になり。
これが美味しいとか、これが味が薄いとか、フルーツが出る日は貴重だとかサラダにドレッシングをもっとかけてほしいとか。
お互い食事に対する文句が多かったけれど、笑い合いながら久しぶりに楽しい食事時間を過ごした。