「どーも。俺のこと知ってるみたいだけど、乙坂 龍之介です。まぁ、適当に呼んで」
「乙坂くんは人気者だもん。知ってるよ。よろしくね。私は千代田 愛美です。私のことも適当に呼んでください」
「千代田ね、おっけ」
最近知った。龍之介くんは、女子生徒にとても人気がある。
そりゃあそうだ。こんなにかっこよくて、ちょっと口は悪いけど妹想いで優しくて。人気が無いわけがない。
学校でもよく女の子たちに話しかけられており、新年度が始まる前は学年が違ったためひたすら女の子たちに焼きもちを焼いてしまってもやもやしていた。
けれど、これも最近気が付いた。
龍之介くんは私と美優ちゃん以外の女の子のことは、必ず苗字で呼ぶ。
些細なことだけれど、龍之介くんは出会った当初から私のことを"奈々美"と呼んでくれる。
それだけのことで自分のことをちゃんと"彼女"として特別に想ってくれているのがわかって、そんなことがすごく嬉しくて、もやもやや焼きもちなんてどこかに飛んでいってしまった。
同時に、いつから私のことを好きでいてくれていたのかも気になるものの、龍之介くんはそれだけは全然教えてくれない。
でも、今が幸せだから気にしない。