「いいのか?俺と付き合ってくれる?」
「うん」
「付き合ったら、毎日こうやって抱きしめるけど。……嫌じゃない?」
耳元で囁くような声に、私からもギュッと抱きつく。
「うん。むしろたりない。もっとして?」
「っ……じゃあ、これは?」
そっと重なった唇。この間の私を落ち着かせるためのキスとは違う、甘くて優しいキス。
触れるだけですぐに離れた龍之介くんの首に手を回して、私からも下手くそなキスをする。
「……嫌じゃないし、もっとしてほしい」
自分からこんなことを言うなんて恥ずかしくてたまらないのに、龍之介くんとのキスはそれ以上に愛と幸せに溢れていた。
少し震えた唇が、龍之介くんも緊張しているんだとわかって、それもまた愛おしさが溢れる。
好き。大好き。
離れて、目が合って、どちらからともなく微笑んで、もう一度甘いキスをして。
……あぁ、幸せだ。
「……私、生きてて良かった」
「ん?」
「あの時、運良く助かって良かった。美優ちゃんと龍之介くんに出会えて良かった」
苦しかった。つらかった。
劣等感ばかり感じて人生を諦めた。
それを乗り越えたと言えるのかは自分ではわからないけれど、これだけは言える。
生きてさえいれば、何度でもやり直せる。
そして今生きているからこそ、私はこうして幸せを噛み締めている。
こんなに幸せでいいのだろうか。現実なのだろうか。まだ夢の中なんじゃないか。
嬉しさも、幸せも。慣れていないから戸惑ってしまう自分がいる。
「俺も。奈々美に出会えて良かった。奈々美が生きててくれて良かった」
でも、確かに繋がれた手を見れば、これが夢ではないことくらい、私でもわかる。
「……ありがとう、龍之介くん」
手にした幸せをもう決して離さないように、お互いの指を絡ませた。