「奈々美」


「ん?」



同じようにマグカップを持つ龍之介くんは、私を見ることなくマグカップの中に視線を落とす。



「学校どうだった?」


「うん。緊張したけど、皆の優しさにに救われた感じかな。いろんな人におかえりって言われて嬉しかった」


「そっか。良かった」


「龍之介くんのおかげだよ。ありがとう」


「俺は別に何もしてないから」



そうやって謙遜するけれど。


知ってるよ。朝が弱いのに、今朝私よりも先に登校してたこと。


知ってるよ。心配してくれて、学校終わってからも私が来るまで待っててくれたんでしょう?


私のために、たくさん考えてくれてる。


龍之介くんは本当に優しいんだ。



「奈々美」


「どうしたの?」


「こんなこと、いきなり言っても困らせるだけだってこと、わかってるんだけど」


「ん?うん」


「どうしても言わなきゃ、後悔すると思って」



マグカップを置いた龍之介くんに倣うように、私もそっと置く。


龍之介くんに向き直るように顔を向けると、龍之介くんもこちらを見ていて目が合った。


そして、私の手をぎゅっと包み込むようにして、不意にそれを引っ張る。


必然的に抱きしめられた状態になった。



「……奈々美。俺、奈々美のことが好きだ」


「……え?」



耳元で聞こえた甘い声に聞き返すと、



「好きだ。どうしようもないくらいに、奈々美が大好きだ」



予想だにしなかった愛の告白に、言葉を失った。