放課後。復学初日を終えた私を、昇降口で龍之介くんが待ってくれていた。
「よ、奈々美」
「龍之介くん。待っててくれたの?」
「あぁ。初日で疲れてるんじゃないかと思って」
なんてことないように私の鞄を取って持ってくれる姿に胸がときめく。
「もう怪我も治ったんだから自分で持てるよ」
「知ってる。でも俺がそうしたいだけだから」
「ふふ、龍之介くんは本当優しいね」
「……バーカ。こんなことするの奈々美にだけに決まってんだろ」
「え?」
「ほら、行くぞ」
「ちょ、ちょっと待って」
今のは、いったいどういう意味?
私の数歩先を歩く龍之介くんを追いかけるように歩く私に気付いたのか、龍之介くんは
「悪い、歩くの早すぎたな」
と言ってスピードを緩めてくれた。
もう私の足は大丈夫だから謝る必要なんてないのに。
二人で並んで歩く帰り道は、他の生徒ももちろんいるわけで。
「ねぇ、あれって───」
「うそ、先輩って今日から復帰したんじゃなかったっけ」
「え、じゃああの二人いつから───」
「え?乙坂くんじゃん。え?うそ───」
「まじ?」
パラパラと聞こえる声は、私たちを見て驚いているものが多かった。
私は全く気にしていなかったものの、龍之介くんは少し耳障りだったのか
「……行くぞ」
と言って私の手を引く。