「言いたいことは全部中原さんに言われてしまったよ。桐ヶ谷さん、少しだけ検査にも付き合ってもらえるかい?」


「っ、はい」


「お母さんはその間私と少しお話ししましょう」


「……はい。お願いします」



お母さんと離れて、涙を拭いて立ち上がる。


お母さんは中原さんと一緒に部屋を出て行って、二人で何かを話しに向かった。



「なに、心配することはないよ。ちょっと話があるだけだろうから」


「……はい」



東海林先生に頷いて検査に向かった。


異常が無いとわかると、しばらくはゆっくり生活するようにと言われて今日は帰ってもいいことになった。


エレベーターで一階に降りながらスマートフォンを見ると龍之介くんから連絡が来ており、お母さんに声をかけて少しだけ病院の外で会うことに。



「奈々美」


「龍之介くん」


「どうだった?」


「うん。検査も異常無いって」


「そっか、良かった」



頭を撫でてくれる龍之介くんは、私の後ろにいるお母さんに気が付いたらしく「はじめまして、乙坂 龍之介といいます」と綺麗に挨拶をした。



「あなたが龍之介くんね?はじめまして、奈々美の母です。あなたがずっと奈々美のそばにいてくれたのよね。本当にありがとう」


「いや、俺は別に……」



照れたようにそっぽを向いた龍之介くんにお母さんは優しく微笑む。



「良かったら、お家まで送っていくわ」


「そうだよ龍之介くん、乗ってって」



車で来たらしいお母さんの提案で



「じゃあ、お願いします」



龍之介くんと一緒に駐車場に向かった。