「桐ヶ谷さん」
「東海林先生」
「待たせたね。記憶が戻ったって本当かい?」
「はい。多分、全部戻りました」
「ちょっと話を聞かせてもらえるかな?」
「はい……」
龍之介くんと美優ちゃんと別れ、私は東海林先生の後ろを歩いて診察室に向かう。
その道中でお母さんが病院に着いたと連絡があり、お母さんが合流するまで待つことにした。
「奈々美!」
「お母さん」
「記憶が戻ったって!?本当!?」
「うん」
「お母さんもそちらにどうぞお掛けください」
「あ、先生。すみません取り乱してしまって。失礼します」
私の隣にある丸椅子に腰掛けたお母さんは、そっと私の肩を抱いてくれる。
東海林先生とお母さん、それから後からやってきたカウンセラーの中原さんに、思い出したことと私が自分から飛び降りたこと、その原因と今までの生活についてを順を追って説明した。
東海林先生と中原さんは難しい顔をして頷き、お母さんは何度も"ごめんなさい"と泣きながら謝っていた。
「お母さんは悪くないんだよ。私がずっとお父さんとお母さんの仕事の邪魔をしたくなくて。それで言わなかっただけ。私が弱かっただけなの」
「奈々美……」
「奈々美ちゃん、それはちょっと違うかな」
「え?」
中原さんは、私の手を取って視線を合わせる。