「懐かしい……。私もね?奈々美ちゃんと同じ高校出身なのよ」
「え、そうなの?」
「うん。これと同じ制服着てたから、すっごく懐かしい」
意外な繋がりに驚いていると、血の痕を見た立花さんが「そうだ」と両手を合わせて微笑む。
「多分私の着てた制服が実家に残ってるから、お下がりで良ければ奈々美ちゃんにあげる」
「え?」
「だって、制服って新しく買ったりすると高いし、揃えるのも大変でしょう。もうそこそこ古いし奈々美ちゃんさえ良ければだけど、私の使って?」
家にあっても仕方ないし。そう言って笑う立花さんに、なんだか胸の奥が温かくなる。
身内がいない心細さの中で、柔らかな優しさは身に染みる。
「……ありがとうございます」
お礼を告げると、立花さんは微笑んでから病室を出て行った。
もう一度リュックの中を覗くと、奥の方にもう一つ何かが入っていた。
「……スマホ?」
それは、ネイビーの背面カバーが付いた、スマートフォン。
電源を付けようにも、充電が切れているのか付かなかった。
「こういう操作は覚えてるんだよね……」
手に馴染んだ動作というのは、記憶が無くなっても覚えているものなのか。
当たり前だがここに充電器は無い。
それによく見れば、画面が下の方から割れている。
後から立花さんに充電器を借りて充電してみたものの、画面は真っ暗なまま。
割れてしまっているせいか、いくら充電しても電源は付かない。
もしかしたらこれで誰かと連絡が取れるかと思ったのに。残念な気持ちは隠し切れなかった。