「奈々美ともっと早く出会ってれば良かった。奈々美のことをもっと早く知りたかった。そしたら、飛び降りるなんてマネさせなかった」
でも、病院で出会わなければ、もしかしたらこんなに仲良くなることはなかったかもしれない。
こんなに助けたいと、守りたいとは思わなかったかもしれない。
ただ同じ学校の先輩としか、見なかったかもしれない。
そうだとしたら。
「あんな怪我までして、記憶まで無くして。……もっと自分を大切にしてほしい。俺はそれに怒ってる」
奈々美と仲良くなれて良かった。病院で出会えて、良かった。
そう思ってしまった俺自身に、そんな不謹慎な自分に俺は一番怒っている。
「だからこれからは、そんなこと考えなくて済むように、俺が支えてやる」
「え?」
「俺が、奈々美を守ってやる」
だから。
「一緒に行こう」
俺が、奈々美を助けるから。
驚きに揺れる瞳の奥に、確かな強い意志を感じた。